第8回目は「サイディングが一部だけボロボロになった家」。どんでん返しに次ぐどんでん返し。これだからサイディングの劣化は怖いのです。
こんにちは。 河合建築事務所・河合です。
あったかハウス河合建築事務所が診断した住宅の不具合と、診断、そしてリフォームを、1件ずつ事件簿風に書き記しています。
長くおつきあいくださいませ!!
以前、窓交換などをさせていただいた住宅オーナーさまから、「サイディングがボロボロになっている」とご連絡をいただきました。
1992年の冬に完成したおうちですから、築28年になろうとしています。
当時としては最先端の断熱・気密レベルで建てられているので、家が寒くなるといった問題はいまだに全くない優れたおうちです。
とは言え、いろいろな部分の劣化は待ったなしで進んでいます。
見に行ってみると、写真のようにすでに外装材の表面がはがれてきています。
原因はというと、サイディングの下の薄いグレーの部分にサイディングが接してしまい、グレー部分にたまった雪や氷が溶けたり凍ったりして、サイディングの凍害を引き起こしたのだろうと想像されました。
薄いグレーの部分は「水切り」といい、本来は通気層の中に侵入した水や、外壁を伝ってきた水を下に落とすための仕掛けなのですが、サイディングが20数年の間に垂れ下がって水切りに接してしまい、水が切れなくなって給水してしまったのでしょう。
そんな予想を立てて、材料も手配し、サイディングをはがしました。
「あれっ? なんかヤバそうだゾ」のポーズ??
というのは・・・
サイディングの裏側に通気層を確保するための木・通気胴縁が腐っているのです。通気胴縁とは、縦に見える木材です。そして、何となく柱も腐っている予感がします。
見ての通り、白っぽい紙に茶色のシミがついており、これは木材がぬれたことを表しているはず。水切りから浸入した雨水は、想像以上に悪さをしている可能性があります。
白い紙をはがしてみることにしました。この白い髪はタイベックという建材で、壁の中にたまった湿気を通気層に吐き出すけれど、風や水は通さない、という性質の樹脂製の布で、最近は新型コロナウイルス対策の防護服として使われている、と説明すればわかりやすいかもしれません。
恐る恐る壁の中を確認してみました。
すると、なんと・・・・
中の木材とグラスウールは健全そのものでした!!
2度ビックリ。
腐っていたのは通気胴縁だけ。タイベックには少し劣化が見られましたが、まだ最上部だと思います。何より、通気胴縁の厚さが普通の家より6mm厚い24mmで、グラスウールのが少しふくらんでも通気層はしっかり確保されていました。
また、タイベックの施工はカンペキで、断熱材の中に空気が入り、断熱欠損を起こしている気配もありません。
ではなぜ白いはずのタイベックがこんなに黒ずんでいるのでしょうか。
その理由はハッキリとはしませんが、もしかするとタイベック表面の毛羽立ちが通気層を通る空気の汚れを絡め取っているのかもしれません。
近くに通行量が多い主要国道があり、排ガスの影響かもしれません。
驚きはもうひとつありました。
厚さ12mmと思われたサイディングが、じつは16mm厚の商品だったのです。
サイディングは15mm以上の厚さがあれば、そんなにひどくあばれないはずですが、こちらのお宅のサイディングはかなり反っています。
反っているから12mmと思い込んでいました。
二重、三重に驚きが続く現場でした。
これだから外壁リフォームは、いったんはがさないと危険なのです。
最後に完成写真。
同じ柄のサイディングはもう売ってないので、
目立たない柄の商品を同色に塗装して終了です。
紫陽花がキレイですね。