2003年(平成15年)に現在の家を新築した清水さん。念願の明るくて暖かい家が完成しましたが、10年も経たない数年前から、外壁がささくれたように傷みはじめていることに気がつきました。清水邸の外壁は、窯業系サイディングと呼ばれるもっとも広く使われている外壁材です。
特にひどくなっていた西面の一部だけを張り替えましたが、このままではどうも長持ちしそうにない。そこであったかハウス河合建築事務所に相談をいただきました。
清水さまはご自身の年齢も踏まえて、今後20年は外壁に手をかける必要がないことを希望されていました。耐久性が高い外壁の中から、今回は乾式タイルを選びました。これは清水さんのご希望でもありました。
タイル外壁も劣化する!?
タイル自体は劣化のない建材ですが、マンションの壁に使われているタイルが落下する事故も報告されており、目地の接着力が低下してはがれる心配もあります。
また、タイルを専用下地材に引っかけて張っていく乾式タイルと呼ばれる方法は、肝心の下地材が徐々に浮いてくることでタイル目地が開く不具合も札幌で報告されています。
こうした外壁材の長所短所を30年以上のリフォーム施工経験から私たちは学んできました。
同じ乾式タイルでも、不具合報告がほとんどない金属系パネルを下地材に使うものでした。選んだのは、ニッタイ工業のセラレーンPBシリーズと呼ばれる製品です。
外壁材として広く使われている窯業系サイディングは、乾式タイルの下地としても採用されています。窯業系サイディングの中にもいいものはあります。ただ、一般的な傾向として、厚さが12ミリの時代の製品や、そのなかでもタイル柄の製品は、反りなどの不具合が起きやすい傾向にあります。清水さまのサイディングもタイル柄の製品でした。
タイル外壁は、デザインや耐久性に期待が高いだけに、安心できる製品をおすすめしたいです。札幌は外壁材にとって厳しい環境にあります。今回採用した金属系パネルを下地にするタイプは、価格は少し高くなりますが下地が変形する心配はほぼありません。また、軽量なのでリフォームには最適なのです」
壁をはがして初めてわかった傷み
工事は、既存のサイディングをはがして漏水がないかをチェックしました。予想外でしたが、外壁の通気層部材である胴縁(どうぶち)材が傷んでいたのです。
「目に見えない不具合でしたねぇ。固定電話の引き込み線を建物に止めつけるボルトがちょっとだけ逆勾配で、水が流れ込んだようなのですが、やはり壁をはがしてみないとわからない」と清水さん。
〈タイル柄サイディングの傷み(左)と胴縁材の傷み〉
張り上がったタイル外壁を見て清水さんがひとこと「やっぱりオレはこの外壁が好きなんだな」。そう、以前のタイル柄サイディングもよく似た色だったのです。
あわてず専門家と相談
いまはサイディングの最低厚さが14ミリになっており、不具合の程度は少し抑えられています。緊急な対応が必要なのは、12ミリ厚のタイル柄です。表面の塗装がボソボソに劣化して再塗装を選ばれる方もいますが、数年でまた塗装が浮いてきます。
タイル柄の製品が傷んできたら、塗装を選ばずに少し予算を貯めて、貼り替えを選ばれることをおすすめします。緊急を要するとは言っても、あわてて塗装することはおすすめできません。
〈タイル柄のサイディングに再塗装して、数年で塗膜がはがれた.北海道住宅新聞社編集部撮影〉
窯業系サイディングのJIS規格(JIS A 5422)は2008年(平成20年)に改正され、もっとも薄い製品厚さが12mmから14mmへ変更になりました。これに伴いメーカー各社は製品ラインナップを変更し、翌2009年までには14ミリ品にほぼ切り替わっています。