築30年・住みながらリフォームでC値0.9を記録|石狩市のY邸

今回のお宅は札幌市の北隣り、石狩市のY邸。

完成・竣工が1987年(昭和62年)4月。築30年の木造在来工法の家でした。


Y邸は、当時としては最先端の熱交換換気暖房設備が導入されており、リフォーム工事前の気密測定ではC値3.3を記録しました。かなりの気密性能です。写真は2階床に設置されている温風暖房の吹き出し口です。気密性能はそれなりに高いのですが、セントラル暖房の熱交換換気暖房を運転すると暖房費が高い。そのためけっきょく生活空間のLDKだけを暖房するかたちになっていました。しかもかなり寒かったそうです。

工事に取りかかって、寒さの原因がわかってきました。

C値3.3の気密性があっても家が寒い理由

まずは、気密性能はそれなりに出ているものの、気流止めの措置がないことです。このため、床下の冷たい空気が床や間仕切壁の中などを通り、室内の床や壁をさながら冷房パネルのように冷やしていたと考えられます。写真は外壁をはがして気流止めを施工する前の床付近です。ピンクのグラスウールの上に畳のワラ床が確認できます。つまりこの家は、畳床に外気が直接入りこむ構造だったのです。加えて、外壁側には断熱材が入っていない部分があったそうです。古い住宅ではこういう例がときどきあります。ユニットバスの床や天井に断熱材がないケースが多いのです。

「断熱リフォームでは、気密性がさほど高くなくても気流止めを設置すれば暖かくなる」
これは、室蘭工業大学鎌田紀彦名誉教授(現・新住協代表)が気流止め断熱改修工法の説明会で解説した言葉です。
鎌田氏は、最も普及している高断熱・高気密工法「新在来工法」を開発・普及させた建築学者です。

あったかハウス河合建築事務所は、鎌田氏の工法をベースに、断熱リフォームの勉強会「あったかリフォーム倶楽部」での活動などを通じて独自の改良を加えています。これまで手がけた多くの断熱リフォームの経験から、室内の間仕切壁と1階床の取り合い部の気流止め、床下の断熱強化、外周壁の気流止め+気密化を非常に丁寧に実施しています。

この部分は、気流止めと同時に気密性能を高めるため、外壁をはがして断熱材をいったん取り除き、気流止めを兼ねる防湿・気密シートを施工するという方法をとっています。
グラスウールをいったん取り除き土台の上から防湿・気密シートを貼っていく(乳白色の部分)

その後、断熱材のグラスウール(ピンク)を戻して断熱・気密・気流止め工事が完了

住んだままの断熱改修では、新築と異なり、すべての部位で完全に気流止め工事ができるケースのほうがまれかもしれません。それでもできる限りの工事をしないと効果が現れないのですが、間仕切壁の気流止め工事が最も大切であることが、北海道立の研究所である北方建築総合研究所の最近の研究でわかってきました。
ところが、間仕切壁の気流止めは非常にやりにくい工事でもあります。
あったかハウス・河合建築事務所は、1階床では気流止め工事を行った上で床下から断熱施工を行います。

写真はちょうど間仕切壁に気流止めを設置した状態。気流止めとはどんなものかというと、写真中央にある透明のポリ袋に入ったグラスウールです。
気流止めを2つ折りにして丁寧に間仕切壁と床の取り合い部に入れていきます。これが実際はなかなかたいへんな手間のかかる工事で、丁寧にしなければ効果がないです。

夜暖房を止めても朝16℃を維持

工事が終わったのは2017年の12月。札幌はすでに白い季節になっていました。
リフォーム前は夜通し運転していた灯油暖房ボイラーを、この冬は24時間タイマーを使い、夜10時から朝4時までの6時間は運転を停止しました。それでも朝は16℃の室温があるといいます。
暖房灯油の使用量はまだ1年分がまとまっていませんが、15~20%程度減る見込みとのこと。ただ、何より暖かく、1階床のヒンヤリ感がなくなったことがうれしいとYさんご夫婦。

なお、

築30年のN邸。断熱リフォーム完了後に、気密測定を実施しました。それがこの結果 C値0.9です。

C値0.9がどのくらいのレベルかというと、家を解体して、柱と梁だけにしてからリフォームするフルリフォームにおける最高レベルと同等、超高気密住宅と呼べるレベルです。
グラフは、北海道住宅新聞社が独自に調査した超高気密住宅(R2000)の新築時と築15年を経過した気密性能です。限られた部分だけを施工する今回のリフォームでも、高気密の住宅は実現できるということなんです。