今回の断熱リフォーム事例は、今住んでいる家を暖かくしたいが、大金が必要なら我慢する、というお考えの方にも参考になる事例だと思います。
札幌市北区新琴似の遠藤邸は、木造モルタルで三角屋根の札幌の特徴的な住宅。昭和45年(1970年)の建物で築40年を軽く超えています。
数年前に、窓を樹脂サッシに交換しています。そして今回は、外壁や屋根などには一切手を付けず、室内側から断熱リフォームを行いました。
「暖かい家を多くの札幌市民に」という思いを共有する研究者とリフォーム店(あったかリフォーム倶楽部)が研究・実践を重ねてきた断熱リフォームのノウハウで、あったかハウス河合建築事務所でも実践しています。
外壁や屋根に手をつけず断熱工事を行う!
最大の特徴は、外壁や屋根に手をつけないため、工事費がとても割安になることです。
キッチンやトイレの交換と内装工事を含めても300万円台で終わりました。
外壁サイディングが交換の時期を迎えていたり、屋根がスガモリで工事しなければならないなどの状況なら、『外壁張り替えといっしょの断熱改修』をおすすめします。
〈床の間を多目的収納に変更した〉
でも、札幌のお宅は、外壁の張り替えや屋根の葺き替え・再塗装を1回、2回していて、屋根も壁も劣化がない場合が多いです。また昔のモルタルがしっかりしていて、サイディングを張る必要のない家もあります。
遠藤さま邸はモルタルがしっかりしており、屋根はすでに葺き替え塗装もしていい状態でした。窓も樹脂サッシに変わっており、外部から工事する必要がありませんでした。
もうひとつ、この工法の特徴といえば、もう使わなくなった2階に手をつけず、1階だけ暖かくすることができるという点です。
ポイントは「気流止め」を室内から施工
〈床下と天井の上に入れた気流止めの例.白枠部分が気流止め材〉
工事のポイントは「気流止め」です。
寒さの原因は、見えない壁の中を冷たい空気が床下から天井に抜けてしまうこと。これを止めない限り、壁の中に新しい断熱材を入れても、壁に断熱サイディングを張っても暖かくなりません。
ただ、室内側からの工事は屋外から行うよりもさらに難しく、難しいだけに手間がかかります。
壁クロスの下に張ってある石こうボードを床付近で切って、壁の中に気流止め材をつめていく。床下の断熱が効いていなければウレタン吹きつけや床を全部やり直して断熱床をつくります。
床の断熱は、とても重要になります。
〈トイレは床をはがしたので断熱を全部やり直しピカピカに仕上がった〉
暖房費が驚きの結果に!
遠藤さんに暖房費が改修前後でどう変わったかうかがいました。 すると驚きの結果が! 暖房と給湯の灯油料金が改修後に4割も減っていたのです。
2014年の合計67,000円(Before)
1月:16,000円、2月:26,000円、3月:25,000円
2015年の合計40,000円(After)
1月:11,000円、2月:16,000円、3月:13,000円
どちらの年も給湯に15,000円程度使われているはず。
灯油価格の変動を考え合わせても暖房費は4割近い削減になっています。
「暖房止めても暖かい」
暖房はストーブ1台。奥さまによると、ストーブのたき方が変わったといいます。
「ネコがいるので外出時もストーブはつけっぱなしだったんです。ところが改修後はすごく寒かった寝室が暖かくなり、夜は暖房を止めるようになりました。それでも以前より暖かい」と断熱効果を説明します。
「河合さんが工事する前に”気流止めが大切”とおっしゃっていたんですが、この冬、その意味がわかりました。壁は気流止めを入れただけ、床の断熱をやり直した部屋もありますが、それだけで暖かく変わったのですから」とご主人。
「敷地に余裕があるので、落雪屋根でも問題ないし、ボクはこの家が気に入っている」と語るご主人。いまやアンティークデザインとなった札幌の三角屋根をそのまま生かして暖かくなり、ありきたりですが「ネコ大喜び!」でした。
リフォームすると、たいていはサイディング壁&無落雪屋根に変わってしまいます。 雪処理などに悩んでいる場合はそれがベストないい方法ですが、昔のデザインを生かしてすリフォームするのもいいと思います。
※価格は、工事を行った時点のものです。