マイナス6℃の朝にメイン暖房を停止
札幌市東区のN邸。あったかハウス河合建築事務所で2017年の10月に断熱リフォームを担当させていただきました。
お話を伺いにおじゃました当日は、最低気温が-6.6℃の日でしたが、リビングに入るなり「さっきまでメイン暖房を止めていたんです」とNさんが衝撃の発言。
N邸はリビングに灯油FFストーブが1台。このストーブは床暖房やパネルヒーターも使える温水暖房バーナーも一緒になったツインバーナータイプと呼ばれるストーブで、リフォーム前からご使用になっています。そのストーブの温水暖房だけで、広いLDKと寝室など約22畳を18℃に保つことができるといいます。これは新築の高断熱高気密住宅レベルの暖かさです。2017年の断熱リフォームは、一部屋根の張替などの関連工事を含めて、断熱改修を行い500万円程度で済みましたが、これだけの省エネ性能が発揮できています。
「説明すればするほど『本当に大丈夫なの?』と親せき・友人に心配される。果ては『きっとだまされている』と」笑いながら話すNさん。住んだまま行う断熱リフォーム技術は、まだほとんど普及していませんので、理解いただけない方も多いのです。ただしすでに公開されている技術です。
高基礎住宅は床の改修が難しい
昭和50年代から平成年代まで20年以上にわたって札幌にたくさん建った1階車庫、2,3階に木造の住宅という3階建て住宅。コンクリート造の1階はガレージと収納スペースで、多くの場合は2,3階だけが住居スペースです。
N邸は昭和59年(1984年)に建てられ、築30年を超えています。構造はしっかりしていて、木材のくされも出窓まわりなど一部に限られていました。
ただし、とにかく寒く、Nさんはペアガラスの室内側に二重窓を追加するなど(上の写真)、いろいろな工事をしていました。
過去にもリフォームを経験していたNさんは、「こんどのリフォームは他人任せにせず、まず自分で納得するまで調べてみよう」と考えてインターネットで検索し、あったかハウス河合建築事務所のホームページに出会いました。読み進める中でとても説得力があったのが札幌市北区拓北Sさんの事例だったそう。
そこにはこう書かれていました。
>「暖かくなることをみんな知らないと思う」
断熱+外壁+無落雪屋根リフォームで500万円/札幌市北区拓北S邸
『暖かくする方法があるんだ。それならまず自分が勉強してみよう』
Nさんは、毎月札幌の手稲コミュニティセンターで開催されている『リノベーション勉強会』に参加していただきました。
N邸のリフォーム工事は
出窓をすべてなくす。当時の出窓は雨仕舞が悪く、水漏れの原因となっている事と、出窓の上と下の断熱・気密施工が悪いため寒さの原因となっている場合が多いためです。
また、引き違い窓はすべて開き窓に交換する。隙間があるためです。
問題は、2階床の断熱・気密工事が相当に難しいこと。2階だけで暮らせるように2階と3階のあいだで断熱・気密を区切らなければならないこと、そして、図面にも実際の壁・床の中にも防湿・気密層がないことでした。上の写真は調査で和室の床をはがしたところ。
高床住宅には床下がないので、いったん床を全部はがして断熱・気密工事を行います。住んだままなので部分的に進め、キッチン工事はNさんが旅行に出かけたタイミングで行いました。
写真はリビングの床。コンクリート土間の上に青いスタイロフォーム断熱材を敷き詰めてすき間を埋め、そのうえにピンクのグラスウールを敷き詰めます。この上に防湿・気密層をつくります。
壁や間仕切壁は床や天井から数十センチの部分から壁の石こうボードを切断して、気流止めを入れていきます。リビング間仕切壁と天井の気流止め工事です。
また、2階だけを断熱するため、天井に断熱材を施工して3階とは熱的に切り離しました。ここでも気密層が連続するように丁寧な工事が求められました。
3階へ上がる階段には断熱ブラインド、1階へ下る階段には断熱ドアをつけて、完全に区切ります。写真右のように断熱ブラインドを完全に下ろせば暖かさは3階に逃げにくくなります。
家が広いから、2階だけで暮らす
リビングに続く和室を洋室にコンバージョン。ここを寝室とすることで、2階だけの暮らしが可能になりました。
3層構造の大きな家ですが、居室部分を2階だけに限定した上で断熱をしっかり区画できれば、あたたかくなる上に暖房費の節約にもなります。また、2階だけで暮らせるのは家が広いから。オリジナルの住宅の良さを活かしながら、シニアライフを支援するリフォームになりました。
ワンちゃんがいるので、これまでも真冬の外出は暖房を止めませんでしたが、いまではストーブを止めて温水暖房だけでOK。また、11月までは暖房を止めて外出し、戻って来ても16℃くらいあって本当に驚いたそう。
これまでは古い家では当たり前ですが10℃くらいまで下がっていました。
完成後に訪れた親せきの皆さんは「いままでいちばん寒い家だったけど、こんどはあったかいね」と驚きの声。そのときばかりは少し誇らしくなったそう。